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1時間ほど、作田の話を感心しながら聞いていた隆彦が突如口を挟んだ
「トシ おまえの講義のおかげで俺もだんだんプロセスマネジメント大学の考え方が掴めてきたよ。
営業マネージャーの役割の大切さや、強い営業部門の条件が、人とビジョンに加え、『仕組み』だって事も、前職での経験から理解できる。すごくおもしろいよ。でもさ、なんて言ったらいいんだろう。プロセスマネジメントって一言で言ったら結局何のことなんだろうって。少しモヤモヤし始めているんだよね。」
講師が旧友の作田であることも手伝って、隆彦はついこらえきれずこんな質問をした。
「んふふ タカ。 テキストの27ページを開いてごらん。ちょうど次に説明しようと思っていたんだ。」
「何事も小さな仕事に分けてしまえば、特に難しくない」 (マクドナルド創業者 レイ・A・クロック)
そのページには大きくそう書いてあった。
トシ「寿司店跡取りのタカにはマクドナルドのやり方を学ぶのはおもしろくないかもしれないけれど、プロセスマネジメントって、『価値を生み出すプロセスを分解して考える』ってことなんだ。」
タカ「いや、そんなことはないさ。江戸前の寿司だって元をただせばファーストフードだし、俺はここに寿司の作り方を習いに来ているわけではないからね。」
トシ「そういうこと。注目してほしいのは、何故あそこのアルバイトが短い訓練期間ですぐ仕事ができるのかということで、タカももう気づいているように、マクドナルドはお客が来店してから満足して店を出るまでの工程を『小さな仕事に分けて』いるからなんだ。」
タカ「その細かく分けたプロセスを、きちんと守らせ、流れがよくなるように管理するって事だね」
トシ「さすが!それをやる人間がマネージャーってことさ。タカのところのような個店が実際のお寿司を握るところをマクドナルドみたいにやるべきかと言ったらそうではないけど、接客だとか、片付けだとか、そういったところは絶対にやるべきだと思うよ。」
タカ「正直考えても見なかったよ。アルバイトの麗華さんにだって、『仕事をしながら見て覚えて』のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が当たり前だと思ってた。」
トシ「お互いの前職(食品卸)もそんな感じだったもんな。確かに麗華さんは仕事ができないと言うより、何をするべきなのかが分からないように見えたね。」
タカ「麗華さんがマクドナルドの店員さんみたいにてきぱき仕事ができれば、もっとお客が満足して、もっと来てくれるようになるね。」
トシ「うまくできたとか間違えたとか、『結果を管理』して小言を言ったり、一喜一憂するんじゃなく、その結果に至るプロセスを徹底的に分解して管理し、最大の結果を得ることがプロセスマネジメントの本質だね。」
さらに作田は話の幅を広げた。
「普段の仕事の仲にも『営業』の要素があると思わない?
お客が、口コミで『さわ田』の事を知ったり、たまたま良さそうな店を探して歩いていて見つける。
店の様子をうかがう。
意を決してのれんをくぐる。
席に着く。
今日のお勧めを見て注文をする。
追加注文をする。
締めにお茶もらって、お勘定をする。店を出る。
なかなか良い店だったまた来ようと思う。
お礼のハガキが来る。
仲間を誘ってまた来る。
この一連の流れがまさしく『さわ田』の営業プロセスって事になるよね。
このすべてのプロセスをマネジメントできればすばらしいことになるとは思わないかい?」
(そうか自分たちも知らないうちに営業してるんだ。ここで学べば確かにそうなるかもな。)
と隆彦は心の中でつぶやいた。
(続く)
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