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第12話 「第二講三日前のソフトブレーン・サービス本社」


 

社長の野部は今日も上機嫌、大好きなココアを片手に、会議室に入るところを作田に呼び止められる。
「おー、作田君。なんか久しぶりだね。」
「社長も私も出張が多くて、お会いできないでいましたね。」
「ところで、お寿司屋さんの補講はどうだった?」
野部は作田にあったら真っ先に聞こうと思っていたことを口にした。最近の作田の成長を見てまず大丈夫だろうとは思っていても、やはり気になるのだ。

「おかげさまでうまくいきました。友人だったのでリラックスして出来たのも助かりました。良い勉強になりました。」

ホッとした野部は、またいつもの笑顔に戻った
「そうか、じゃあ本講デビューもそろそろ考えようか。それで1講の内容はきちんと理解して頂いたの?」

これまで以上に自信をつけた作田は待ってましたとばかりに淀みなく答えた。
「はい、早速実務に使えるWBSを完成してもらえました。ホール係業務用のものなんですけど、効果てき面だったらしく、入店1ヶ月目のアルバイト女性、これは前回お店にいた麗華さんという人ですが、WBSを見せながらの指導を1回しただけで、おかみさんの指示無しで定型業務を自発的にこなせるようになったそうですよ。」

「確かにあの日も、おかみさんにいちいち指示されながらやってたもんね。そりゃ 良かった。」

作田は報告を続ける。
「はい、隆彦君の感想は『これまで何やってたんだろう??』でしたね。麗華さんの前もアルバイトさんがなかなか   続かなくて大変だったそうですよ。」

「お店は指導時間や、求人の手間も省けるし、アルバイトさんも不本意なやめ方をしなくてすむ。WINWINだね。」
野部はさらに上機嫌になった。プロセスマネジメント大学の校長を務める野部はプロセスマネジメントが受講生の役に立つことが何より嬉しいのだ。

「具体的な目標としては『10ヶ月後に、月販500万』という現状の2割増しのものを定め、進捗表に書き込んでもらいました。」

「そうか、まず数値と期間の目標、つまりゴールを決めていくことが何より大事だからね。あとはそのゴールへのプロセスをしっかりマネジメントしてほしいね。」

「ええ、さらに沢田さんは」
ことさら隆彦を顧客の一人として、他人行儀な言葉遣いで作田は続けた。

「『まずは自分の店のあるワンブロックで一番になることが大事、何事も小さく分解してしまえば簡単だ!』と、一番になる大切さを説いたウィニングエッジの考え方と、レイ・クロックの言葉をすっかり自分のモノにしていましたよ。」

「ほー、なんか先行き楽しみだね。」
と目を細めた野部は付け加えた。
「作田君の力もなかなかのもんだねぇ、こっちも先行き楽しみだ。」

「いやー それほどでも。」
野部にほめられ、ほおが緩んだのもつかの間、表情を引き締めた作田の顔には顧客の成長を真に願うプロのまなざしがあった。

「2講は小松さんですね? 小松さんの本講義で沢田さんの理解がさらに深まるのが、また楽しみですね。」
小松会長がどんな風に、彼の力を引き出すのか、この目で確かめ、さらに隆彦から聞きだしてみようと、作田は思うのだった。

(続く)

 


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