プロセスマネジメント小説 本文へジャンプ
第13話 「第二講前夜前の沢田宅にて」


 

8月×日深夜 仕事を終え自宅に戻った隆彦は、自室にこもっていた。
いつもなら楽しみにしている深夜枠のお笑い番組も、今回は録画して明日見ることに決めていた。
隆彦がパソコンに向かって何をしているのかというと、提出したプロセスマネジメント大学の宿題をチェックしているのである。
こんなに根を詰めるはいつ以来だろう。隆彦は久しぶりに充実した時間を過ごしていた。

春江はダイニングで一人機嫌がよい。
春江は仕事はいまいちでも、素直で性格のよい麗華が大好きだった。
いつも決められた時間より前に店に入る麗華とお茶を飲むことが、本当に楽しい。
しかしその大好きな麗華に辞められてはと気を遣い、遠慮しいしい指示をする日々にほとほと疲れ切っていた。

10日ほど前、隆彦がつくった「ホール係WBS」のおかげで麗華にこまごました指示を与えなくてもよくなったことを麗華より喜んでいるのは春江だった。。


一方、和彦はというと、狭い湯船に無理やり体を沈め考え込んでいた。
あの麗華が「ダブルなんとか」という紙ぴら一枚で仕事が出来るようになったことに少なからぬショックを受けていたのである。

これまで辞めていったバイトの面々の顔がいやでも浮かんでくる。
「俺のやり方は間違っていたのかなぁ。 というより、そもそもウチに『やり方』なんて無かったんじゃないか?」

 プロセスマネジメントか・・・


   「あ〜あ・・・」
 
プロセスマネジメントというその言葉に、なんとはない不信感と、これが大事な一粒種、隆彦の成長のポイントになるのではないかという期待が入り交じり、和彦は湯船の中で何とも複雑なため息をつくのであった。

第1章 完