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第10話 「星取表」


 

 タカ「よし 書けたぞ。これ「味噌汁WBS」のフォームと違って『責任者・担当者』らんが最初の行に名前書くようになっているね。」

トシ「いいところに気がついたね!、ここにお店の人を全員書いてみて。」

タカ「えー、親方、おかみさん、信さん、俺に、、麗華さんっと」

トシ「そして、実際にやる人には○、手が足りないときにやる人には●、監督している人には◎を入れてみて。関係しない人は何も入れなくていいよ。」

タカ「えーっと ホール係はおかみさんと麗華さんだから○、俺も時々手伝うから ●、見渡して指示しているのは信さん、親方は基本ホールはノータッチだからなにもいれないっと。これで良い?」

トシ「ばっちりさ、これでこのホール係の基本動作のWBSは完成だね。」

タカ「うーん、でもさ、同じ○でも麗華さんはおかみさんの指示がなきゃ、まだちゃんとできないし、俺の方ができるくらいだよ。信さんも親方もやろうと思えばいつでもできるし」

トシ「そうだね、WBSの責任者・担当者は必ずしもその業務に対する習熟度とは関係がないね。もし一番出来る人が担当者だったら、全部親方が担当しなくちゃいけないね。」

タカ「そりゃありえないね、前職の販売先では常務さんが一番実務に張り切っている会社があったけど、成績は良くないし、社員のモチベーションも低かったね。」

トシ「そういうことさ、とはいえ業務ごとにその人の習熟度がわかるツールがあったら、分業する時に楽だよね。今度は今の表の印をつけるところに、出来ない人は×、指導があれば出来る人は△、一人で着る人は○、指導できる人は◎をつけてみて。」

タカ「親方は◎、おかみさんと信さんも◎、俺は○、麗華さんは△かな」

トシ「この業務別にその人の習熟度をマークしたものを『星取り表』って呼ぶんだ。親方は指導も出来るけど関与しないって立場で☆をつけても良いかもね。星取り表があれば、何が出来て何が出来ないかすぐわかるから、指導も楽だし、その人自身もスキルアップの計画が立てやすくなるね。」

タカ「うちは大丈夫だけど、個々のスキルが赤裸々に見える化されることに抵抗がある人もいるんじゃない?」

トシ「そんなときは○を+で4分割して習熟度が上がるたびに扇形を塗りつぶしていくとか、タマゴ・ヒヨコ・親鳥や、ふたば・つぼみ・咲いた花など、この先のスキルアップを予感させる印にするのも一つの手だね。とは言っても、お互いに個々の能力をごまかしなしで客観的に認め合って高めあっていく『共育』の風土を醸成することが、結局王道だと思うけどね。」

タカ「なるほど、王道に近道なしだなぁ。」

(続く)

 


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